アニメ定量分析の定量部分の補足
ノイタミナプロデューサーである山本幸治氏がSPA!で連載中の「アニメ定量分析」の定量部分についていくつかデータの補足をしてみる。
第1回目は放映されるアニメが減少していて「深夜アニメに限定するならば純然たる新作は全盛期の3分の1くらいになっているといえるね」*1
*2
実際は最盛期39本から24本へと6割程度に低下しているが,1/3まで減少しているわけではない。純然たる新作というのは,第二期モノを除外するということであるとしても,現状で10本以上が第二期モノではないため,山本幸治氏の主観にすぎない。
第2回目はDVD,BDの価格の問題を取り上げていたが,日本映像ソフト協会の公表データではなく,個別の作品で並べたのは定量分析とは言い難い。
*3
洋画に関しては低価格化が進んでいるのに対して,アニメはBDでは平均単価が値上がりしているというのは「コア層の忠誠心を試す商売」*4としての価格設定といえる。だが,劇場版空の境界BD-BOXを例示するのは極端すぎる。空の境界は単館上映から始まった7部作であって,ハリー・ポッターやトイストーリーと比べるべき対象ではない。全国公開の劇場版アニメで比較すべきでスカイクロラや銀魂劇場版などがあげられる。スカイクロラはBDだと8190円と高いが,銀魂劇場版は通常版DVDが3990円と価格では洋画と大差ない。ただし,DVDの売り上げは通常版よりも限定版が上回るだろうと予測しておく。実勢価格で3000円と6000円の価格差ならば,ドラマCDやキャストインタビューといった特典の価値を高く感じる層の方が多いということである。それはアニメ+αとしての特典の魅力としてとらえるのか,忠誠心の発露として捕らえるのかで見解が分かれるだろう。
もともとSPAの連載は「“萌え”がアニメを殺す!」と副題がついており,危機感を煽る連載になっているので,悲観的な記事になるのは狙い通りなのだろう。