イオンシネマ幕張新都心 総支配人引継式

ガルパン劇場版を上映した中の人たち』でお世話になった,イオンシネマ幕張新都心の中の人が異動ということで引継式に行ってきた。シネコンチェーンとしては前代未聞の公開引継式。もともと人事異動で総支配人は替わるので「中の人」と称していたのだが,もはやイオンシネマどころかイオンエンターテインメントで最も有名な人になっているわけで,普通にこっそり異動というわけでにはいかない。黙っていてもご意見うけたまわりカードの責任者印でそのうちバレてしまう。

羽藤総支配人が仰ってたように,総支配人が変わったことがネガティブな印象につなげないという配慮がこの引継会の一番の目的。番組編成やイベント上映は劇場の意向が100%通るわけではない。しかも毎週毎週上映作品のラインナップは変わっていく中で,企業として利益を追求しなければならない。客からの要望に応えようと思っても,劇場の努力だけでは応えられないことは多いわけで,それを支配人が替わったからと思われたらたまったものじゃない。イオンシネマの中で最もツイッターのフォロワー数の多い幕張新都心は,それだけツイッターでつぶやかれる劇場なので,ポジティブな反応はもちろんネガティブな反応も広がりやすい。

トラメガ片手に上映前に挨拶していたことから「中の人」として知名度が高まり,ツイッターでULTIRAで上映する作品についてつぶやいていたことがフォロワー数4000人超につながっていたわけで,それが引継式で343席完売になった。「私がいなくなっても変わらないので安心してください」と積極的に総支配人の交代を広めて引き継ぎがなされたと認識してもらうことの目的は岩浪監督と後任の中の人*1と三人で壇上に立つことで半分くらいは達成できた。さらに,後任の中の人がガルパン初心者らしい「五十鈴さん」呼びとたどたどしい挨拶でこれからに期待をもたせたし,岩浪監督からは今後も幕張新都心のULTIRAをホームシアターとして活用していく言質はとれた。

中野総支配人は人事部で総支配人の研修担当をやっていたそうなので,羽藤総支配人もトレーニーとして研修受けたような口ぶりだった。士官学校時代に鬼教官にしごかれた士官が現場活躍していると,後任に鬼教官が現場復帰してきたような展開なんだろうか。

引継式終了後にパンフレット売り場の配置が1面だけニンジャバットマンで残り全部ガルパンに変えられていた。中の人がスタッフからも慕われていたことが伺える。

シネコンチェーンで総支配人は人事異動で頻繁に替わるし,チェーンである以上総支配人の属人性が各劇場につくのは好まないのかもしれない。しかしシネコンが映画文化を地域に伝える使命があると称するつもりであるならば,その劇場運営の責任者である総支配人は客に知られていいし,総支配人の異動は公にしたほうがいいと思う。個人的には,異動の告知がもっと早ければ,シアターレンタルで送別会を開きたかったくらい*2

この2年のガルパン劇場版ULTIRA上映に始まり,岩浪監督によるULTIRA9.1chアップミックスによって,Planetarianこの世界の片隅に幕張新都心だけ音響調整が施された。それがBLAME!ガルパン最終章,ニンジャバットマンDolby Atmos版制作につながったという点では,劇場版アニメの音響面での貢献は非常に大きいと言える。それはイオンモールのフラッグシップの中の映画館として設備に力が入っていたからこその点はあるが,2013年12月の開業から2016年3月まではULTIRAがほとんど知られていなかったし,設備のアピールもなされていたとはいえない。Dolby Atmosを備えた劇場に,たまたまガルパン劇場版がまわってきて,劇場設備にうるさいガルパン客層に届き,Dolby Atmosでつくりたいと思っていた音響監督の試みに「スタンドブレー」を厭わない総支配人が乗って今に至るわけで,天の時,地の利,人の和が揃った稀有な事例。


ガルパン劇場版ULTIRA上映開始からULTIRA9.1chアップミックスにかけての経緯については,弊書『ガルパン劇場版を上映した中の人たち』でみっちり語ってもらっています。コミックマーケット94,8月12日東ナ-38aのエッジワース・ボックスで頒布。




 

*1:中の人が中野さんという偶然。

*2:幕張新都心の8番を平日2時間借りると\222,950。